知識基盤社会の一層の高度化・複雑化が進む中で、人材育成や学術・文化の継承発展は学校のみならず社会全般の営みの中で常に重視されるものになっています。東京学芸大学は新制大学として設置されたときから“有意の教育者”養成をその目的に掲げてきました。そのことを具体化する取り組みとして、平成27年に学部を改組し、教員養成課程とは別に教育支援課程を新たに立ち上げました。
情報化やグローバル化が進む現代社会の中で、教育は豊かな多様性を育み一生涯の学びを支えるものへと変化してきています。教育支援課程では、図書館司書や学芸員など多彩で文化的な学習活動を支える人材を養成する「生涯学習・文化遺産教育コース」の他に「カウンセリングコース」や「ソーシャルワクコース」等の資格に基づくスペシャリストを養成するコースがあります。また、グローバル社会での人材育成を視野に入れた「多文化共生教育コース」、情報基盤社会の推進に寄与する「情報教育コース」、第三の知性とされる芸術表現に関する理論と実践を育む「表現教育コース」、体力づくりや競技力の向上など健康社会を支える人材を養成する「生涯スポーツコース」があります。各コースの特色ある学びの質を高めるとともに、コース間の連携を強化したカリキュラムに令和5年度より改編して、課程一体となって教育支援人材を養成することを目指しています。
多様化する社会において学校の中で学習者の学びに寄り添うだけでなく、学校だけでは賄えない学習資源を調達すること、学校の外にある学習資源を学校と結びつけること、学校の外に別の形の学びの機会をつくること、これまで学校とは直接的な接触を持って来なかった組織・団体に教育という社会的役割を担うことについて理解を持ってもらい、そのために必要な調整を行うこと、など、学校教員とも協働してこれらの役割を担う人材を養成することが、教育支援課程の目的です。
これまでも教育マインドを持った本学の卒業生たちの多くが、人材の養成と管理といった、組織にとってそのパフォーマンスを高めるための基盤的な課題に取り組ませていただいています。次世代を育てる教育とそれを支援する役割・作業についての知識と経験、技能と意欲を持った本学の学生たちは、変化する社会と組織の中でさまざまな人々と協働し、多様な人的交流の中から新しい経済的・社会的価値を創出することに、大いに貢献してくれるはずです。東京学芸大学の教育支援課程の卒業生たちに、また教員養成課程から教職以外の職を求める学生たちに、これまで以上に活躍の機会を提供してくださることをお願い申し上げます。
副学長(学生支援担当)鈴木 聡