1.活動の概要
岩手県を活動拠点とする特定非営利活動法人SETが募集する学生インターンに参加した。6地域の活動からの選択制で、私は『一戸町と僕らの未来開拓プロジェクト(通称:いちぷろ)』と題された、一戸町の中高生が大学生と一緒に町と自分の可能性にチャレンジし、生きたい生き方に向けて走り出すキャリア教育プロジェクトに取り組んだ。週1回のオンラインミーティングと月1回の現地入りを基本とした活動だったが、ここでは現地入りについて報告する。
2.活動の詳細とそこで得た学び
(1)第1回現地入り@岩手県陸前高田市広田町(6/3、4=14時間)
本来の活動フィールドである一戸町を離れ、陸前高田市広田町に6地域をフィールドとする大学生メンバー全員が集結し、結束の強化と各チームの目標の具体化・言語化を図った。三陸館(三陸の岩を描いた岩手県陸前高田市の画家である故・畠山孝一氏の絵を展示する古民家美術館)を訪れた際には、東日本大震災当時のSETメンバーの復興ボランティア活動に言及し、外部からの大学生が地元住民では気づかない地元の良さを発見したことを『すきま風』と表現していたことが印象深い。また、単純に住民のあたたかさや住民どうしのつながりの強さを感じた。
この現地入りを通して、私は『人とのつながり』を大切にしていきたいと感じたと同時に、このつながりは外部の大学生が簡単に作り上げることができるのか、このつながりを「いちぷろ」に生かすことはできるのか、など『人とのつながり』についての疑問が湧いた。また、中高生の探究学習の『伴走』役となる自分たち大学生には、中高生が『自走』するためには何ができるのか、次回までに整理しておきたいと感じた。
(2)第2回現地入り@岩手県一戸町(7/15〜17=19時間)
チームの本来の活動拠点である一戸町を初めて訪れ、フィールドワークを通して地域住民と交流すること、及び探究イベント「だべり場」を通して地元中高生の興味・関心を引き出し、8月の本格的なイベント「マイプロジェクト3daysプログラム」への足掛かりとすることを図った。この現地入りの山場であった「だべり場」では、想定外の参加者の少なさに急遽イベントの次第を変更し、臨機応変な対応が求められた。開始直前まで話し合いを重ね変更に対する対応はうまくいったが、私自身の課題として、参加者である中高生の興味・関心を引き出す声掛け・問いかけの方法に課題があった。既出の興味・関心事項を深化させるための問いは5W1Hによるオープンクエスチョンを意識することで発することができたものの、自分では気づけていない興味・関心事項を引き出す発問をすることができなかった。一度自分の興味・関心に落とし込んで考え、自分はなぜそれに興味・関心があるのかを考えることで発問のヒントを得ていきたい。また、チームでも発問の仕方を検討していきたいと感じた。『伴走』の方法について学ぶ意欲が高まった。
フィールドワークも併せて振り返るとこの現地入りを通して、前回抱いた『人とのつながり』に対する疑問がより強くなった。月1回の現地入りで『人とのつながり』を築くことと中高生の『伴走』をしていくことのバランスをどのようにとっていくか、探究の『伴走』に対して『人とのつながり』はどれほど重要度の高いものなのか、この根本として、『伴走』者に求められる役割は何なのか(ファシリテーター、コーディネーター、ジェネレーター等)。チームの最終目標に照らしながらこれらの問いに向き合っていくことで、相手に対して少しでも良い影響を与えながらも、自分にとっても深い学びになりそうだと期待感を覚えた。
(3)第3回現地入り@岩手県一戸町(8/5〜10=42時間)
2度目の一戸町訪問である今回の現地入りでは、1年を通じての最大のイベントとなる「マイプロジェクト3daysプログラム」の運営、及びその間3日間で行われた中高生のミニアクションの『伴走』を行った。計6日間の流れをまとめる。DAY1及び2で中高生の「やりたい」を引き出し軸を定め、その達成に向けて「やりたい」を明確にするミニアクションの計画を立てた。翌日からの3日間でそのアクションを実行し、DAY3でミニアクションの振り返りによって「やりたい」を確かなものにしつつ、地本住民も巻き込んでアクションの報告会を行い、中高生には地域のバックアップがあることを理解してもらった。
私にとって初めての本格的な『伴走』の経験であり、何も経験がない分、中高生のためになるかどうかを軸に考え抜きながら、とりあえずやってみる精神で活動することができた。DAY3において上手く中高生の「やりたい」に触れ引き出すことができた感覚があったが、その要因を完全に把握することができていないことから、まずは上手くいったことを精査し、継続して使えるスキルとして身に付けたい。上手くいかなかった経験はたくさんあるが、自分だけで悩むのではなく大学生チームで相談したり、職員にアドバイスをいただいたり、文献にあたったりしながら、よりスキルを進化させたい。情報収集中ではあるが、何らかのセミナーに参加することも考えている。また、過去の現地入りで挙げていた『人とのつながり』の部分は、このプロジェクトが「一戸町の中高生が大学生と一緒に町と自分の可能性にチャレンジし、生きたい生き方に向けて走り出す」ためのものであったと今回の現地入りを通して再認識できた。この認識から、今後の活動における『人とのつながり』の位置づけを『伴走』のための1つの手段とすることで、自分の中で納得することができた。
3.今後の展望
1点目は、中高生の『伴走』についてである。「マイプロジェクト3daysプログラム」で強固なものになった中高生の「やりたい」に対する軸をもとに、今後も中高生のアクションは続き、それに伴って大学生の『伴走』も続く。8月の現地入りでは1週間という時間を最大限使って中高生の『伴走』をすることができたが、これからは月1回、1泊2日の現地入りとなり、1回あたりの時間は短くなる。よって、まずはチームでこれからの『伴走』の形式を明確にし、それに沿って自分には何ができるのか、これまでの学びと今後も続けていく知識・経験の蓄積をもとに考えていきたい。また、そのための知識や経験の蓄積に努めたい。
2点目は、納得解として生み出した『人とのつながり』の位置づけを『伴走』の1つの手段とするという考え方の洗い直しである。これはあくまで納得解であって、正解(があるのかないのかは不明だが)であるとは考えていない。「いちぷろ」のメインの対象は中高生であるが、地域の方々にも協力していただくこともある。よって、中高生にとっても、私たち大学生にとっても、そして地域の方々にとってもメリットがあるような活動にしなければならない。このことを肝に銘じながら、この活動における『人とのつながり』の意味を追求していきたい。最後に、ここまで考えるべきことばかり書き並べたが、そこに実践が付随するよう心がけていきたい。